食品用途に好適な真空ポンプを理解する
2021年05月27日
7分間の読み物
真空ポンプの機構
ウェットポンプのポンプチャンバー内には、2つの目的に使用するオイルが入っています。1つ目の用途は可動部品の潤滑で、2つ目の用途はポンプ内のすき間を満たして真空度を高めることです。ドライポンプは、ベアリングとギヤにオイルを入れて潤滑しますが、ポンプチャンバー自体にオイルは入っていません。高い真空度は、設計時に組み込まれています。
食品および飲料製造エリアでは、ポンプが直面する第1の敵は、水蒸気と、糖類や脂肪酸などの汚染物質です。ウェットポンプは、水蒸気と汚染物質を引き込みます。100°C/212°F未満の温度で作動するため、水蒸気がポンプ内で凝縮して液相の水になり、オイルを乳化します。他の汚染物質は、常にオイル内に捕捉され、オイル交換までそのまま保持されます。
リグマンは、「脂肪酸はポンプを腐食させます」と言います。「糖は別の問題を作り出します。また、水蒸気は、ポンプ内で凝縮し、ポンプ容量が減少する状況になります。これは、お使いのポンプのポンプ容量を完全に失わせるわけではありませんが、かなりの部分が失われます」と言います。
その結果、水蒸気に含まれる汚染物質のためにオイル交換を頻繁にしなればならなくなり、メンテナンスの必要性が高まります。こうしたオイル交換は、オイルのコスト、人件費、そして最も多額に上る費用として真空ポンプ整備中の生産ラインダウンタイムのコストを考慮すると、あっという間に高額になります。乾燥処理よりも水蒸気量が多くなるフリーズドライなどの用途では、オイル交換がさらに頻繁に必要となり、コストが増大します。
ドライ真空ポンプ内にはオイルがなく、水蒸気の凝縮に十分なほど高温で作動します。糖類や脂肪酸などの汚染物質は、ポンプ内のオイルに溶け込むのではなく、排気口を通過します。ドライ真空ポンプで念頭に置いておくべき考慮事項の1つは、特定のポンプが、糖類や脂肪酸がポンプコンポーネントに焼き付くほど高温で運転していないかということです。
ドライテクノロジーのエネルギー効率は、ウェットテクノロジーと比較して30%まで変動しますが、運用コストは低額です。そのため、ドライポンプには、エネルギー使用量の利点がありますが、実際の高効率の源は、ドライポンプには頻繁なダウンタイム発生の原因になるサービスやメンテナンスが不要となることです。ポンプメンテナンスのためにラインをシャットダウンする必要がないため、同じ期間あたりの生産性が向上します。
特別な用途
真空ポンプに求められる仕様は、使用時の用途によって異なります。梱包用途には、速いサイクルの低圧が必要です。タンブリングや混合などの処理では、梱包よりも高い圧力と長いサイクルタイムが使用されますが、要求されるのは高圧というよりも中圧です。フリーズドライの場合、サイクルタイムはさまざまですが、要求される圧力は上記の2用途のどちらよりも低くなります。
ライボルトの製品販売開発マネジャー、ジム・ハップは、「各用途を個別に検討すると、ポンプ要件の違いは非常に明白になります」と言います。ハップが、この3領域におけるドライ真空ポンプの使用法について説明します。
梱包
梱包では、食品処理やフリーズドライと比較して汚染物質がほとんどありませんが、生産工程からの汚染物質キャリーオーバーの可能性はあります。アップタイムが重要であり、サイクルタイムはより速くなります。
ハップは、「私は、生産フロアにおいてできる限りコンパクトなドライテクノロジーを探しています。洗浄区域で使用でき、水蒸気や大量の液体キャリーオーバーの処理が可能な上、乾燥した粒子汚染物質をある程度処理できるものです」と言います。
処理
水蒸気と製品キャリーオーバーがあるため、汚染物質は大きな懸念事項です。汚染物質の可能性があるということは、サービスまたは修理のためポンプを繰り返しオフラインにしなければならない場合に稼働時間が危険にさらされるということです。
ハップは、「私が望むことの1つは、ポンプのサービスと清掃を現場で行う能力です。この分野では、製品キャリーオーバーのリスクが非常に高いため、ポンプが大量の液体や製品スラリーを一気に飲み込んで停止し、生産再開までに交換が必要になることがよくあるのです」としています。
フリーズドライ
存在する水蒸気の量を考慮すれば、汚染物質は重大な問題です。フリーズドライしたベリーなどの日常的な製品には糖類が含まれており、ウェットポンプのオイルが汚染物質になることがあります。サイクル時間はさまざまで、所要圧力はこれら3用途のうちで最も低い値になります。
ハップによれば、「必要に応じてポンプを開き、手作業で清掃してオンラインに戻す機能は備えてほしいところです。この作業は通常1時間以内に完了できます。1時間以内に手作業でポンプをオンラインに戻せるのなら、ポンプ全体を交換する場合や、交換用ポンプを入手するまでラインが休止中になる場合と比較して、大きな利点となります」ということです。
真空ポンプの要件は、用途、環境、および関連する製品の特性に応じて大幅に変化する場合があります。ポンプを最大限に活用したい処理業者は、関連するあらゆる要因を理解したうえでそれらを組み合わせて、ポンプに対して過酷な条件を作り出す必要があります。
生産ラインのポンプ以外の部分と同様に、生産能力、初期費用、および総費用をすべて計算に組み入れます。これらはすべて、購入決定前に明確に定義する必要があり、入手可能な最良の情報に基づいている必要があります。一例を挙げれば、フリーズドライ環境のウェットポンプに必要なオイル交換頻度を正確に予測できれば、総コストに大きな違いをもたらす可能性があります。
リグマンは、「ひとたび決定がなされたら、問題は現在のポンプが生産要求を満たすかどうか、そしてそうでないならどのような変更が必要かということです。ポンプを特定の用途に適したモデルに交換するということは、生産ラインを休止しなければならないということです。これは容易な判断ではありませんが、生産効率を最大限高めるためには必要です」と説明しています。
また、「変更後により良い結果が得られるだろうと分かっていてさえ、変更のためのダウンタイムは会社にとって最も受け入れにくいことの1つです。生産ラインを休止すると、その間は生産が遅れるわけですから、休止は難しいことなのです。その間に資金が減少し、計画に遅れが生じ、受注残が溜まり、誰にもプレッシャーがかかります。難しい決断なのです」ともしています。